去年の夏の頃、ふと思いました。
発足してまだ8年足らずではあるが、その間に随分沢山の逸材を輩出してきたのではないかと…。自慢げに取られかねませんが、ぼくは客観的事実と認識しています。すでにプロとして活動している者は何人もいます。数々のコンペで入賞、入選をした者は数え切れないほどいます。それ以外でも着々と力をつけ、かなりのレベルに達している者も沢山います。しかし、「仕事」というチャンスに恵まれない者が沢山いるのも事実です。
そこで思いついたのが出版でした。MJ生(卒業生、現役生、合わせてそう呼びます)の本を作ろう。作品集を作ろうと思い立ったのです。人数も増え機が熟したと思ったからです。ある時期までMJ生の作品集が作れるなどとは、想像だにしたことはありませんでしたが。
(・・・中略・・・)
叱責や反感を覚悟して言うなら、そんな10代の終わり頃に自覚した「イラストレーションを見る目」があったからこそ、塾を続けて来られたし、こんな本を出せることになったのだと思います。ぼく個人としては、いろいろ紆余曲折や不平不満もありましたが、押しなべて言えばイラストレーターとしてよい時代を生きてきたと思います。
しかし、現在、日本のイラストレーターの置かれている現状は、決して芳しい状況とは言えません。イラストレーター自体は多種多様な実力とやる気のある人たちが沢山います。イラストレーター志望者もMJを例にひくまでもなく、かつてないほど沢山います。なのに何故でしょう。
需要と供給のバランスが崩れています。使われ方もおかしいことが多々あります。バブル崩壊以降の広告の仕事の激減(随分年月も経ちましたが)、近年の出版不況等が大きな要因かと思われます。しかし、そればかりではないと思いますが…。
とにかく、イラストレーターにとって良い時代が再び訪れること、そして、願わくばこの本が新しい波、新しい風になってくれることを祈るばかりです。